離婚後自宅をアンダーローンで売却する場合
婚姻中に取得したマイホームを離婚時に売却しようと決めた場合、その住宅が今、
アンダーローンの状態なのか、オーバーローンの状態なのかで大きく状況は変わります。
難しくなるのはオーバーローンの状態の時で、アンダーローンの状態の場合は、売却した代金で住宅ローンを完済できるので比較的問題は簡単です。
アンダーローンの場合は
どうやってその住宅を高くスピーディに売るのか?
というところが一番のポイントになってきます。
できるだけ高く売るためにどうすればいいのでしょうか?
基本だけでもしっかり確認しておきましょう。
アンダーローンとはどういう状態?
おさらいになりますが、もう一度アンダーローンについて確認しておきましょう。
アンダーローンの状態とは、
売却した代金で住宅ローンを完済できる
=アンダーローン
という状態のことをいいます。
売却できるであろう予定金額と現在の住宅ローンの残高を確認し、その代金で住宅ローンの残高をすべて完済できるのであればアンダーローンの状態ですので、売却が可能になります。
これに対しオーバーローンとは
売却できる金額で住宅ローンが完済できない状態のことをいいます。
現金や他からの融資などで不足分を用意しないとその自宅は売却することができません。
しかし、実際には新築住宅を建てて返済を開始してから10年位では、余程頭金を多く入れていない限りはオーバーローンになってしまっているケースがほとんどです。
新築住宅というものは新築時に特別なプレミアム価格として評価価格がつきます。
住宅ローンはこの価格から融資の額を決定しますので新築というだけでかなりの上乗せ評価になっているのです。
しかしこの住宅も一度住めば中古住宅になりますから、一気に価値は下がり、売却できる価格はかなり安くなってしまうのです。
こちらでも詳しく解説しています
→ 【離婚と住宅ローン】持ち家を売る(売却)場合の問題点>>実際にはオーバーローンになってしまうケースが多い
『ローン残高を知る』住宅ローンの残高はどこで確認できるのか?
今の状態がアンダーローンなのかオーバーローンなのかについて確認するにしても、まずは現在のローン残高がいくらなのかわかっていなければ何も進みません。
現在の住宅ローンがいくら残っているのかは、金融機関から出されている返済予定表で確認ができます。
また住宅ローン残高証明書というものも年末調整で必要になるため毎年届いているはずです。
こちらは年に1回ですので計算が必要になりますが、おおよその目安にはなるでしょう。
また窓口に依頼をすれば現在の正確な住宅ローンの残高が記載された新しい証明書も発行してもらえます。
※残高証明書の届く時期
銀行によって時期は異なりますが、
みずほ銀行では
当年9月末までに借り入れた方:10月下旬ごろ
当年10月から12月末までに借り入れた方: 翌年1月下旬ごろ
→https://www.faq.mizuhobank.co.jp/
三井住友銀行の残高証明書
借り入れ2年目以降:10月下旬ごろ
借り入れ1年目:翌年1月下旬ごろ
→https://www.smbc.co.jp/kojin/otetsuduki/
簡易計算サイトでチェックも可能
返済予定表も残高証明書もすぐには見つからない。
でもいますぐおおよそでいいからローン残高が知りたい。
という場合は、あの計算機のCASIO(カシオ)さんが提供しているこちらのサイト「keisan」で計算してみましょう。
ローン返済(毎月払い)、ローン返済(ボーナス併用)など細かい設定でおおよそのローン残高が計算できます。
このようにまずは今のローン残高を確認しましょう。
まずはここからです。
次は現在の住宅の価格がいくらになるかです。
『売却金額の査定をする』実際には住宅はいくらで売れるのだろうか?
次にやるべきことは実際には自宅がいくらくらいで売れるのかを把握です。
これがわからなければ本当にアンダーローンで収まるのかどうかもわかりません。
実際にアンダーローンで収まると思い、売却する方向で進んでいたのに思ったよりも大幅に安い価格でしか売れないことがわかり計画のすべてが振り出しに戻ってしまうということもとても多いのです。
またこの売却金額も依頼する不動産会社によって大きく変わります。
ある不動産屋では2,000万円と査定された住宅が、他の不動産屋では2,500万の査定金額が出るということなどは珍しいことではありません。
よくある話です。
不動産会社は自社がその物件を預かった時にいくらで売却できるかを考えます、それはすなわち査定金額です。
その会社が高く売るノウハウや力がある場合は高い査定金額がつきます。
反対に高く売る自信がないノウハウがないという場合には(売れなくては一銭にもにもなりませんから)安い査定金額しかつかないのです。
物件を高く売るにはやはり一般の商品同様に広告宣伝などにお金をかけられるかなども重要な要素でしょう。
大手のネットワークのある会社でしたら新聞広告や折り込みチラシ、ネット広告などを駆使して買い主を探すことが可能です。
またWEB上のネットワークシステムでたくさんの買い主を捕まえることもできます。
しかし小さな不動産会社ではこのような方法はなかなかとれません。
相場よりも格安の査定を出して一気に売却してしまおうという営業スタイルのところも多いのです。
ただし、昔からあるようなスタイルの駅前の店舗にチラシを貼ってお客様をただ待つ・・・というようなスタイルスの不動産屋さんでも、地元に強力なコネを持っていてとても営業力があるというような場合もあります。
ですが、余程の田舎でもない限りは今はインターネットなどもしっかり使って買い主を見つけてくれる会社の方がやはり営業力高いでしょう。
不動産一括査定サービスを利用する
売却できる金額がいくらになるのかは「不動産一括査定サービス」を使うのが一番いいでしょう。
今は大小20〜30くらいのサービスがあります。
それぞれ様々な特徴があり、得意分野も違いますが、売却したい地域(自宅がある場所)に強いサービスを選ぶといいでしょう。
複数のサービスを同時に使うこともできます。
もちろん査定までは無料ですし、査定には簡易査定である机上査定とと本格的な実査定である訪問査定があります。
今はおおよその査定額が知りたい段階だと思うので机上査定を選べはいいでしょう。
不動産一括査定サービスは、通常ならば何社にも個別に査定の依頼をしなければならないところを、大元のサービスに1回連絡することによって、その地域で対応できる不動産屋さんに一度で連絡ができるというサービスです。
不動産会社には正直ちょっと怖い・・・近づきにくい・・・というような会社もあるのですが、この一括査定サービスに登録している会社の場合は怪しい会社では登録ができませんのでその点でも安心できます。
登録している会社も地元の会社、全国チェーンの地元支部などいろいろです。
査定額も各社によって大きく変わってくるので、1社ではなく、可能ならば5〜6社からの査定をとっておきましょう。
高すぎる、安すぎる査定は除外して見てみるとおおよその自宅の価格が推測できると思います。
実際に売買に進むには訪問査定などではっきりした金額を出してもらって、売約する行動に進みます。
おすすめの不動産一括査定サービス
不動産の一括査定サービスは今は大小たくさんのものがあります。
この中でどれを選ぶかは人によって変わるのですが、やはり売却したい場所(その不動産がある場所)を担当している不動産会社ができるだけたくさんいるサービスを選ばなくては意味がありません。
査定を申し込んでも一件も反応がないというのでは駅前の不動産屋さんに行った方が早いと言うことになってしまいます。
各査定サービスごとに「都会が得意、郊外が得意など」得意不得意がありますので、比較しながら選ぶといいでしょう。
また複数のサービスに登録する方も多いです。
ただ、まず1つどこかのサービスを使ってみようと言うことでしたらイエウールなどが使いやすくおすすめです。
イエウールは、大手の支店や地元密着の不動産会社など1,800以上の会社が登録している業界の中でもメジャーなサービスで安心です。
そしてイエウールには訪問をして査定をしてもらう訪問査定と、物件の住所などの簡単な情報で査定をしてもらう机上査定があります。
この机上査定を使うと実際の訪問はなく、物件の売却金額のおおよその額をつかむことができます。
よほど急いでいる場合以外はまずはここからのスタートになります。
机上査定の場合はイエウールの本部の監視があるので、しつこく営業をかけられるというような心配もありません。
売却の1歩目としてはとてもおすすめなサービスです。
『媒介契約を結ぶ』売却の依頼までの流れ
机上査定である程度の希望の査定額が出て、売却を決めた場合はどのような流れになっていくのでしょうか?
ここでも簡単に解説しておきましょう。
@訪問査定(実査定)をしてもらう
机上査定はあくまでも概算の価格になります。
土地だけや建物の価値がほぼないような中古住宅なら机上査定でもそれほど誤差はでないこともありますが、離婚で自宅を手放すという今回のようなケースでは今まで住んでいた(もしくは住んでいる)家の売却になるわけですから、当然住宅としての評価も重要になってきます。
ですので実際にその住宅を見てみないことには正しい査定額はつきません。
戸建てではなくマンションでしたらまさに実査定キモになります。
ですので、机上査定で依頼したいと思う不動産会社に実査定を依頼して実際の査定をしてもらうのが次のステップです。
ここでも1社に絞る必要はありません。
内見をして机上査定価格から大きく変わってくる可能性もありますし、実際に訪問してきた不動産会社が感じが悪いというケースも当然あるでしょう。
机上査定で査定価格的にも、会社の好感度的にもよかった会社数件に実査定を依頼します。
何社に依頼してもいいのですが、今度は中を見に来るわけですから、あまりに多数の会社に依頼してしまうとかなりの心労になります。
ここは今までの対応でよかったところ数社に(2〜3社)しておいた方がいいかと思います。
A媒介契約の締結
不動産の売却を依頼する場合は媒介契約というものを結ぶことになります。
売主と不動産業者(売買の仲介業者)が結ぶ「この物件を売りたいので販売活動をお願いします」という契約です。
この契約を結ぶこと自体には費用はかかりません。
不動産業者との間でかかる費用は基本的には売買契約時の仲介手数料になります。
媒介契約には3つの種類があります。
不動産会社からの拘束力が弱いものから、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属選任媒介契約」となります。
【一般媒介契約】
一般媒介契約は複数の会社と結ぶことができます。
同時に複数社が販促活動を行えるので人気の物件にはいいのでは競争になりいいのですが、それ以外の物件の場合は売却するということに関しての責任の所在が1つではないため活動が停滞してしまう可能性があります。
【専任媒介契約】
専任媒介契約は1社としか結ぶことはできません。
専任媒介契約を結んだ不動産会社は売主に対して販売活動における義務を負います。
例えば、「レインズ(不動産流通標準情報)」への登録義務や売主への活動報告の義務(2週間に1回)などです。
この不動産は私たちの会社が販売を任されているという責任の上でしっかりと販売活動を行わなければならなくなります。
売主側としても1社に依頼しているので契約期間は他社へ依頼することはできません。
契約違反となります。
【専属専任媒介契約】
専属専任媒介契約はこれがさらに厳しくなったものです。
不動産会社はレインズへの登録はもちろん、売主への報告も1週間に1回が義務づけられます。
(専属専任媒介契約の場合は売主が自分で探してきた方と売買契約をすることも禁止されます。専任媒介契約の場合はこれは問題ありません。)
と以上3つの媒介契約がありますが、専属専任媒介契約まではあまり結ばれることはなく、専任媒介契約か一般媒介契約が多いでしょう。
専任媒介契約か一般媒介契約のどちらがいいかは悩みどころですが、売れやすいと感じる物件の場合は、不動産会社も一生懸命に販売活動をするので一般売買契約でもいいでしょう。
競争になることで早く買い主がつく可能性が高くなります。
反対にあまり売れないかな?と思う物件の場合は一般媒介契約ではどの会社も真剣に販売活動を行いませんので、専任媒介契約を結んでおいた方がいいでしょう。
一つ注意点としては、専任媒介契約は1社としか結べませんので、販売力が弱かったり、態度が悪かったりする業者と契約を結んでしまうと3ヶ月間解約できません。
他社に頼むこともできません。
ですので専任媒介契約を結ぶ場合はしっかりと不動産会社を見極めてから契約を結ぶようにしましょう。
訪問査定をしてもらった際に査定額だけでなんとなくで決めてしまうのも危険です。
どんな会社なのか店舗はどこなのか?などしっかり確認しておきましょう。
ここで間違えると売れる物件も売れなくなります。
契約期間は3ヶ月で自動更新はありません。
(一般媒介契約は法律上では期間は定められていませんが、業界的にはやはりこちらも3ヶ月になっているそうです)
売却後の残った現金はどうなるの?
アンダーローンの状態で自宅の売却ができ、住宅ローンの残高を完済してもさらに現金が残った場合、これは原則夫婦のものとなります。
自宅の名義が「夫」だけの名義になっていても関係はなく、夫婦が結婚後に協力して築き上げた財産は共有資産と見なされ財産分与の対象になります。
夫名義でも財産分与で受け取れるの?
財産分与とは、夫婦が結婚後に協力して築き上げた財産は共有資産とするというもので、不動産や車、預貯金、保険や有価証券などの財産はすべてこれに当たります。
ですので住宅を売却して残った現金も当然その対象なのです。
妻が専業主婦で夫だけに収入がある結婚生活を送っていたとしても関係はありません。
妻は家庭を守っていたということになり同じく財産を分与する権利があります。
この割合も原則2分の1。半分ずつというのが原則です。
(民法第762条)
そしてその財産に関しては、協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができるとなっています。
(民法第768条)
※住宅だけではなく預金や保険、株式などもすべてこの財産分与の原則通り2分の1は妻に受け取る権利があります。
また財産分与には税金はかからないので、離婚後に自宅売却の残金を受け取った場合は税金はかかってきません。
離婚前に自宅を売却しその残金を妻が受け取った場合は(夫の名義の住宅の場合)、贈与税の対象になるので注意が必要です。
アンダーローンでの売却はスピーディーに
以上がアンダーローンの状態で不動産を売却する場合になります。
ざっくりまとめますと
@住宅ローンの残高を確認
A売却できる金額を知る(机上査定)
B不動産会社との媒介契約を結び販売活動の開始
C売却
D残金の分与
という流れになります。
あくまでもアンダーローンの場合だけになりますが、できることならこのように住宅を売却していくのが後々のトラブルは少ないでしょう。
やはりローンを支払い続けどちらかが住むというのは今は良くても将来的な不安は残るからです。
アンダーローンになっていない場合でもできれば現金を別に用意してでも、持ち家を手放し新しく生活をスタートするというのは多くの方が選ぶ道になります。