離婚時にオーバーローンなってしまう場合の自宅の整理法
結婚時に購入したマイホームを離婚の際に手放す場合、その住宅のローン残高がどのくらい残っているのか大きな問題です。
自宅を売却した代金が住宅ローン残高を上回る場合はアンダーローンの状態ですので問題はありませんが、下回る場合はオーバーローン(債務超過)の状態といい、不足分を用意できなければ売却はできません。
例えばローン残高が2,000万で売却できる価格が1,800万である場合200万をどこかで用意してこないかぎり金融機関の設定した抵当権を外すことができないので売却はできないのです。
このように自宅を手放すこともできないのがオーバーローンの状態での離婚となります。
なぜオーバーローンになってしまうのか
今現在がアンダーローンかオーバーローンなのかは住宅ローンの残高と自宅の売却額(売却が期待できる金額)によって決まります。
現在の住宅ローンがいくら残っているかどうやって確認するかについてはこちらで解説しています。
→ 離婚後自宅をアンダーローンで売却する場合のポイント>>『ローン残高を知る』住宅ローンの残高はどこで確認できるのか?
戸建てでもマンションでも新築で住宅を購入した場合、返済が始まって10年くらいではオーバーローンの状態だと思っていて間違いないでしょう。
その家が建っている地域の土地の値上がりが高い場合や余程頭金を入れている場合以外は、ほとんどがまだまだオーバーローンです。
というのも住宅は新築時にだけ特別なプレミアム価格がつきます。
新築住宅だけは評価価格が大幅に上乗せになる傾向にあるので、その評価価格をもとに住宅ローンを限度額ギリギリまで借りてしまっていることが多いのです。
しかしこれは新築の時に価格ですから少しでも住んでしまえばもう中古住宅になり価格は一気に下がります。
自動車でも新車は高いですが数キロしか走っていなくても新古車になると急に安くなりますよね、それと同じです。
あくまでも新築プレミアム価格なのです。
ですのでその住宅で暮らしはじめて数年でもたってから実際に査定に出してみると、「え?こんなに?」と思うほど価格が下がってしまって驚くことになるのです。
このようにまずはオーバーローンであるかもしれない、売却できないかもしれないというのは覚悟しておくべきでしょう。
オーバーローンかどうか微妙なラインの時は・・・
住宅ローンの支払いがはじまって間もないなどオーバーローンであることが明らかな時は別ですが、オーバーローンかアンダーローンか悩む微妙な時もあると思います。
これは住宅ローン残高だけではなく、その住宅にいくらの価格がつくかにかかってきます。
その場合は住宅情報誌や情報サイトでおおよその相場を調べてみましょう。
そしてここでも(アンダーローンで売却のところでも書きましたが)不動産一括査定サービスで机上査定を申し込んでみましょう。
(机上査定までならそれほどしつこい営業を受ける心配もありません)
不動産の査定価格は会社によって大きく変わります。
同じ住宅が1,500万だったり、1,800万だったりと数百万変わることも多いのです。
ですので、オーバーローンだと思っていたらアンダーローンだったり、アンダーローンだと思っていたらオーバーローンになってしまったりということもよくあります。
微妙なラインだと思ったらここは一度査定をかけてみた方がいいでしょう。
「オーバーローンだ・・・売却はできない」と完全に諦めるのはそれからでもいいかもしれません。
不動産の一括査定についての記事はここで解説しています。
→ 離婚後自宅をアンダーローンで売却する場合のポイント>>不動産の一括査定サービスを利用する
イエウールは、大手の支店や地元密着の不動産会社など1,800以上の会社が登録している業界の中でもメジャーなサービスで安心です。
そしてイエウールには訪問をして査定をしてもらう訪問査定と、物件の住所などの簡単な情報で査定をしてもらう机上査定があります。
この机上査定を使うと実際の訪問はなく、物件の売却金額のおおよその額をつかむことができます。
よほど急いでいる場合以外はまずはここからのスタートになります。
机上査定の場合はイエウールの本部の監視があるので、しつこく営業をかけられるというような心配もありません。
売却の1歩目としてはとてもおすすめなサービスです。
オーバーローンの場合の自宅の整理方法は?
では完全にオーバーローンの状態であることがわかり、ローン完済のための現金も用意できない場合はどうなるのでしょぅか?
この場合は金融機関の抵当権が外れないので売却はできません。
そのまま持ち続けて住宅ローンを払うことになります。
どちらか(もしくは両方)がこの住宅ローンを住む住まないにかかわらず完済まで払い続けることになります。
ただ、その後生活の状況が変わってこの住宅ローンが支払えなくなったら・・・どうなるのでしょう?
将来的な話ではなくても、たとえば夫が住宅ローンを払うことになり、それ以外に養育費(場合によっては慰謝料も)などを払うということになったとします。
そこで住宅ローンも今まで通り払っていくことができるのでしょうか?
住宅ローンの支払いが滞るとどうなる?滞納から競売までの過程
では住宅ローンを払えなくなってしまった場合、どのようになっていくのかを見ていきましょう。
住宅ローンの支払いが滞ると「督促状」が届きます。
「住宅ローン支払いのお願い」と書かれたハガキや封書が「督促状」です。
たまたま銀行残高が不足していたなどの場合はすぐに支払えば問題はありません。
ただ支払えずにそのまま滞納すると、約3ヶ月で「個人信用情報機関」に金融事故として記録が載ります。
いわゆるブラックリストです。
それでもさらに払わずにいると、残金を一括で払うようにと請求がきます。
(督促状よりさらに厳しい「催告書」が届きます)
もともと住宅ローンは決められた額を決められた期限で払うことを前提として定められた金融機関との約束です。
住宅ローンを滞納するということはその契約を守れなかったということ。
ですので契約違反になりローンという分割で払う権利を失います。
(これを専門用語で「期限の利益の喪失」と言います。)
次はいよいよ「差押え」になります。
所有者が勝手にその不動産を処分できないように住宅ローンを借りている金融機関が差し押さえの登記をはじめ、「競売」の申し立てを裁判所に行います。
これが進むと裁判所から「競売開始決定通知」が届き、競売へ向けての準備が始まります。
裁判所の執行官と不動産鑑定士が対象物件の確認をし、査定額を出し、競売にかけられます。
競売にかけられると「今物件が競売に出されています」という告知がなされます。
これは「住宅ローンを滞納して払えなかった」というのが世間に出てしまうと言うことでもあります。
そして入札(競売で購入希望者がつくこと)され、落札されると所有権は落札者のものになります。
まだ家を明け渡していない場合はすぐに退去しなければなりません。
競売後は住宅ローンはもう払わなくていいの?
競売では市場価格よりもずっと低い価格で売買がなされます。
当然、住宅ローンは残ったままです。
この場合残りの住宅ローンはどうなるのだろう?
と疑問に思うかもしれませんが、債務としては法律上は残り督促状などはそれ以降も届きますが、何が何でも借金として取り立てられることはないというのが一般的な見方です。
競売=これ以上は取り立てしても回収の見込みがないというのが金融機関でもわかっているので競売後の個人の住宅ローンの回収にそれほど時間を労力をかけられないのでしょう。
ですので、家はなくなってしまいますが住宅ローンとしての支払いはこれで終わりになります。
ただし、競売にかけられらたというのは、住宅ローンが払えなかったと言うことですので、先ほども書きましたが「個人信用情報機関」に金融事故として記録が載ります。
ブラックリストに載るということです。
ですのでその後の一定期間は新しいローンは組めませんし、クレジットカードなども新規では作ることは難しいでしょう。
また住宅ローンは払えなかったとしてもお勤めが先がしっかしした企業で給与所得がしっかりある場合は、給与の差押えなどを執行されることもあります。
一般的にこの住宅ローンの未払いに対する時効は5年です(10年の金融機関もあります)。
この期間を過ぎると時効が成立し、それ以上は請求はされなくなります。
これが競売までの流れです。
任意売却とは?
競売になる少し手前の段階で、金融機関との話し合いの上で通常の住宅のように売買をする「任意売却」という方法もあります。
通常オーバーローンの場合はその物件を売却することはできません。
しかし住宅ローンを滞納し、競売になってしまうと一番損をするのはローンの貸し付けをしている金融機関です。
競売の場合は市場の2割〜3割くらいの価格で入札され落札されてしまいます。
この金額を住宅ローンの代わりとしてこれでは金融機関はとても損をしてしまうわけです。
任意売却とはこの競売になる少し前に、金融機関の了解を得て、オーバーローンの状態で一般の売買をするこというものです。
金融機関側も競売になるよりは高く売れる可能性があるのでメリットがあります。
売る側としても、競売のように「競売物件です」というような公知も出されないので周りに知られることもありません。
競売よりも高く売れるので残債も当然少なくなります。
その後の債務を払えないとういう場合には競売でも任意売却でも売主側にとっては同じかもしれませんが、その残債を返済していく場合には当然こちらの方が借金の額は少なくなります。
また買い主を自分で見つけてきて売却することもできます。
購入する側も市場より安く購入できますし、売る側も「競売になるくらいなら・・・」と知り合いなどに買ってもらうこともあるでしょう。
また任意売却を引き受ける専門の会社もあります。
銀行で紹介してくれることありますし、最近ではWEBサイトでも良くみかけます。
ただし・・・任意売却の専門業者には詐欺的なところも多いようです。
競売になりそうな住宅を持っている債務者であるということから手数料だけ取って姿を消してしまうというような業者も多いと聞きます。
ですので、自分で探す場合にはあまりいい話には乗らずに十分に注意し、しっかり調べる必要があります。
どちらにしても金融機関(借りている銀行)が承諾しなければ任意売却を進めることはできません。
任意売却もブラックリストに載ります
任意売却の場合も「個人信用情報機関」に金融事故として記録が載ります。
いわゆるブラックリストの対象になります。
任意売却は住宅ローンを滞納して競売になりそうな状態から、実際に落札されるまでの間に売買を成立させるものです。
ですのでこの段階ですでに金融事故になってしまっているというわけです。
売却後も競売の時と同様に、新規のローンやクレジットカードの作成などは当面できなくなります。
任意売却をした後の住宅ローン残債については、
1.一括して支払う
2.分割して支払う
3.支払える範囲で支払う
という3つの選択があるのですが、実際には競売の時と同様に法的債務は残るがそのまま払わないというケースがほとんどではないかと思われます。
オーバーローンで競売や任意売却以外に自宅を売却する方法はないのか?(リースバックとは)
以上、オーバーローンの状態の時に自宅を手放すには、ローンの残高分の現金を用意できない場合は売却はできないとお伝えしてきました。
そのまま払えなければ競売か任意売却という選択になります。
競売、任意売却はどちらもブラックリストです。
これ以外に自宅の住宅ローンを完済する方法はないのでしょうか?
実はここに新しい形として1つ「リースバック」という形式があります。
このリースバックとは正式にはsale and leaseback(セール&リースバック)といい、賃貸借契約付き売却のことを言います。
家を売った代金を受け取り、その後は買主に賃料を払ってそのままその家に住むというのがこの仕組みです。
また「いったん売却するが数年後には買い戻したい」というような希望がある場合は、買い主との話し合いにより「買い戻し優先権」付きの契約を組むことも可能です。
このリースバックを利用できれば住宅ローンの苦しみからも逃れることができますし、自宅もそのままそこに住むことができます。
周りの人にも誰にも知られずに何もなかったかのようにそのまま暮らすこともできるのです。
このリースバックについてはあたらめて詳しく解説していきます。
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