離婚後妻(妻子)が持ち家に住み、夫が住宅ローンを払う場合の問題点
婚姻時に取得したマイホームを離婚時に売却しない場合、
@妻と子供が住む
A夫が一人で住む
B夫と子供が住む
お子さんがいると想定するとという3つのケースが考えられます。
(※お子さんがいない場合は妻が一人で住むというのもあるでしょう。)
今の日本では親権は母親になるケースが85%以上になっています。
ですので、「@妻と子が住む」場合には養育費の代わりとして夫がそのまま住宅ローンを払い続けるという約束で離婚をすることも多いでしょう。
「それなら安心。住む場所も確保できたしよかった。」
と離婚調停での決定時には思うかもしれませんが、実はここにはかなりの問題が隠れているのです。
ここでは離婚後妻(妻子)が持ち家に住み、夫が住宅ローンを払う場合の問題点について詳しく解説していきます。
子供の気持ちを考えるとどこに住むのがいいのか
前ページでもお伝えしましたが、離婚時にお子さんがまだ小さい場合は妻が子供を連れて実家に戻る、もしくは実家の近くに住むということが多いと思います。
離婚しシングルマザーとなった時、子供が小さいとどうしても仕事と子育ての両立は難しく、可能ならば実家の助けを借りたいところだと思います。
この時期のお子さんにとってもっともつらいのは寂しいということ。
お母さんが仕事で忙しくいつも疲れている、話をする時間もないというのはお子さんにはつらすぎる毎日です。
頼れるのであればそこで「じいじ」「ばあば」といった祖父母とのふれあいうを得ることでお子さんの寂しさかなり和らぐのではないでしょうか。
生活環境を変えないということよりも寂しくないこと、これが子供が小さいときの離婚の優先事項だと思います。
反対にお子さんがある程度大きくなっている場合はどうでしょうか?
小学校の高学年、中学生くらいになってくると、子供には子供の生活があります。
友人関係、部活動、勉強など、自分の大切な世界をもう持ち始めています。
親の離婚での精神的ストレスが大きい中、転校や住む家が変わるなどの環境の変化は子供の心にどれだけの不安を与えるか・・・。
もしかしたら我慢して「いいよ。」と言ってくれているかもしれません。
ですが、その心の中は相当に複雑だと言うことは想像できます。
またこれから迎える思春期、今までのストレスや我慢が引き金になって通常よりもこじれた思春期になることだって十分に考えられます。
これからは母と子で暮らしていかなくてはならないわけです。
ここで子供との関係までこじれてしまったら・・・それは本当に生きるのさえつらくなります。
ですので、状況が許すのであれば、子供の複雑な気持ちを守るためにできるだけ生活環境を変えないこと。
今まで住んでいた家にそのまま母子が暮らすというのはとてもいい選択だと思います。
もちろん父親が引き取り父子家庭として暮らしていく場合も同じです。
解決しなければならない問題とは?
このように状況が許すのであれば、子供がある程度の年齢になっている場合は妻子がそのまま持ち家に住み、住宅ローンは養育費として夫が払っていくというのは理想的なケースだといえるでしょう。
離婚調停でこの約束もできた。
これで安心。
と思って暮らし始めると実はあとあと大変な問題になってしまったという方の話はたくさんあります。
というのも、別れた夫は確実に完済までローンを払っていってくれるのでしょうか?
厚生労働省の統計によると離婚後養育費を払い続ける人は、きちんとした取り決めをした人の中の2人に1人です。
公正証書で取り決めをした人でもこの割合だということは、夫婦だけの話し合いで決めた場合は当然もっともっと低くなっているはずです。
余談ですが、私自身の経験でも養育費は数ヶ月で止まってしまいましたし(これは特別にひどいような気もしますが・・・)、私の友人の話を聞いてもしっかり養育費をもらっている人は半数くらいしかいません。
厚生労働省の統計の通りだなあと思ってしまいます。
これも父親と子供が離婚後も面会をしている場合は養育費は払ってもらえるのですが、この面会がないとまず支払いが止まるケースが多いです。
いくら自分の子供だとはいえ、離れて暮らして会うこともないとなるとどうしても愛情が薄くなってしまうのかもしれません。
もちろんこれは一般的な数字でなにがあっても責任を果たしてくれる方ももちろんたくさんいるでしょう。
でも夫側のリストラなど経済的状況が変わってしまい支払いが不可能になってしまうことも考えられ、絶対に大丈夫!と安心しているのはとても危険です。
夫が住宅ローンを滞納したらどうなる?
もし、夫が住宅ローンの支払いをしなくなったらどうなるのでしょうか?
これはオーバーローンのところでもお話しさせていただいたように、滞納が続くとその住宅は競売にかけられます。
競売になればもちろん家は第三者のものになりますので出て行かなくてはなりません。
競売の流れについて詳しくはここで解説しています。
→ 離婚時にオーバーローンになってしまう場合の自宅の整理方法>>住宅ローンの支払いが滞るとどうなる?滞納から競売までの過程
そして何よりも怖いのは、夫が住宅ローンを滞納していることを事前に妻側が知ることができないということです。
住宅ローン滞納の際の督促状は住宅ローンの名義人のところにいきます。
住宅ローンを夫名義で組んでいる場合は夫のところに行きます、住んでいる妻のところにはきません。
「実は住宅ローンを滞納してしまったんだ・・・」と元夫側から話があればいいですが、離婚後の関係性にもよりますが、なかなかこれは言いにくいものではないでしょうか・・・。
そしてこれが6ヶ月続くと自宅は差押えになり競売にかけられる準備が進みます。
ここでいきなり競売になると聞かされてももう手の打ちようがありません。
また途中で滞納していることが何かでわかったとしてもローンの名義人ではない場合は代わりに支払うこともできません。
夫にお金を渡し本人から払ってもらわなくてはならないのです。
これは住宅ローンの名義が住んでいる当人の妻ではなく夫になっているから起こる問題です。
住宅ローンの名義を妻名義に変更する
住宅ローンの名義と不動産の名義は別のものです。
住宅ローンの形はいろいろあります。
連帯債務やペアローンの場合は夫婦それぞれに債務があります。
ペアローン=夫と妻が同じ不動産に対し、別々にローンを組んでいるもの。
妻の方が圧倒的に年収が高いなど特別な事情がない限り、ほとんどの家庭では住宅ローンの名義は夫になっているのではないでしょうか。
将来にわたり安心してその家に住みたいなら、住宅ローンの名義は実際にそこに住む妻に変更するべきです。
「住宅ローンは夫が払うのだから当然夫の名義でいいのでは?自分の名義にするというのは借金が増えることになるし、わざわざその必要はないでしょう?」
と普通は思いますし、その通りなのですが・・・ここで問題になるのが夫が住宅ローンを払ってくれなくなった場合です。
滞納の督促状や競売の通知などはローンの名義人である夫のところにしか届きません。
ですので妻側が何も知らないうちに事が進んでしまうのです。
裁判所からいきなり退去命令が出てもどうすることもできません。
場合によっては夫と連絡がつかなくなってしまうことだって十分に想像できます。
これを防ぐには、離婚時に住宅ローンを自分の名義(妻名義)に変更しておくことが対策になるのです。
「自分の名義ではなくなったら夫は払わなくなるのでは?」
というのももちろんあるとは思うのですが、名義に関係はなく払う人はきちんと責任を果たすし、払わない人は払わなくなると思います。
(離婚時はみんなしっかり払うと言いますから・・・)
ただしこの約定についてはもちろん法的効力も持てるように公正証書でしっかり取り決めをしておくことをおすすめします。
住宅ローンが妻名義になればその後の支払いの通知は妻にくるようになります。
夫からは養育費の名目で自分の口座に直接振り込んでもらうようにすればいいでしょう。
住宅ローンではなく自分への口座の振り込みですから振り込みがなければもちろんすぐにわかりますので催促もできます。
また本当に支払いが滞りもう払ってもらえないとわかった時も、黙って競売を待つのではなくリースバックなどの方法も検討する余地が出てきます。
リースバックについてはこちらで解説しています。
→ リースバックとは|競売・任意売却で自宅を手放さないもう一つの方法
住宅ローンを妻名義に変更するには
住宅ローンを夫の名義から妻の名義にするということは、今までの住宅ローンの名義変更という単純なものではなく、新しく借り換えるという行為になります。
いわゆる住宅ローンの借り換えというものです。
この借り換えは正直に言うとかなり難しい借り換えになります。
妻が正社員で収入がかなりあったとしてもこの名義変更による借り換えは渋ることの方が多いのです。
というのも元々は夫名義で借りていた住宅ローンです。
もしくは夫だけではなく、妻が連帯保証人になることで収入を合算するなどして組んだローンだと思います。
これが妻一人の名義になるわけですから、金融機関が「はいそうですか」と簡単にOKを出すわけはありません。
住宅ローンというのはもともと新築住宅の購入のために組まれるローンです。
離婚したから名義を変えて借り換えたいというのは主旨が異なります。
「離婚したから今借りている銀行で名義を変更してこよう」というものではないのです。
ですので基本的には今まで借りていた銀行での変更ではなく、新しく借り換えを受け付けてくれる銀行で借り換えるというのが一般的です。
そしてこういった借り換えを専門で支援してくれる住宅ローンコンサルタントという人たちがいます。
住宅ローンコンサルタントとはどんなことをするの?
住宅ローンコンサルタントは離婚での借り換えだけではなく、様々な住宅ローンの借り換えのサポートをしてくれます。
少し前の時代は一昔前の時代は一度住宅ローンを借りたら、それを借り換えるというのはあまりなく、はじめに組んだローンのまま完済までその金利で払っていくというのが当たり前でした。
しかしバブルの崩壊以降金利が大幅に下がったことにより、それより以前に住宅ローンを組んでいた人は、新しい金利の安い住宅ローンで借り換えをするだけでずっと得になるという現象が起こったのです。
ですがただ今借りているところでお願いしてもこれは通りません。
銀行としてはせっかく高い金利で貸し出しているものをわざわざ安い金利で借りてもらう必要はないからです。
ですので借り換えを受け付けてくれる銀行を探し、交渉をすることになります。
新築住宅の時は住宅を購入した時の不動産会社や住宅メーカーが住宅ローンの申し込みもすべてやってくれたはずですが、この借り換えの場合は自分たちでやらなくてはなりません。
この手助けをするのが住宅ローンの専門家である住宅ローンコンサルタントです。
住宅ローンコンサルタントは住宅ローンの専門家ですから、様々な銀行の融資担当と強いつながりがあり、一般ではなかなか申し込みができない案件も通す実績があります。
- どの銀行なら借り換えを受け付けてくれるのか?
- 自分の条件に一番あった商品(住宅ローン)はどれなのか?
- 住宅ローン借り換えの審査を通しやすくするのはどうすればいいのか?
こういったノウハウを持っているのが住宅ローンコンサルタントです。
住宅ローンコンサルタントに依頼するには手数料がかかります。
ただし、たいていのコンサルタント会社では手数料は成果報酬になっているので、住宅ローンの借り換えが成功しなければ手数料は発生しません(ここは依頼前に確認が必要です)。
またこの手数料も新しく借り換えるローンに組み入れてもらうこともできるので手数料分を別に現金で用意しなくてはいけないということもありません(これもそのコンサルタント会社の力によります)。
離婚のケースで依頼したい住宅ローンコンサルタント会社
住宅ローンの借り換えの専門家である住宅ローンコンサルタント会社も今はいろいろと増えてきました。
ただ一般的な借り換えとは異なり離婚の場合の借り換えは名義の変更などいろいろな問題がありますのでさらに複雑です。
そして妻名義の住宅ローンするというのは借り換えの難易度も高くなるでしょう。
ですのでここでは離婚時の住宅ローンの借り換えを専門で扱うコンサルタント会社をおすすめしたいと思います。
それは「離婚・住宅ローン対策センター」というところでまさに名前の通りです。
こちらのセンターは、株式会社JMPパートナーズという住宅ローン借り換えの専門会社が運営していいて、その中から特に離婚時の住宅の問題について専門的に相談を受けている部門です。
株式会社JMPパートナーズは全国に支店を持っている大きな組織で、各コンサルタントも住宅ローン診断士という資格を取得したプロが対応します。
手数料は完全成果報酬になっており、ローンの借り換えが成功したときに初めて費用も発生するので、その前の相談などには手数料はかかりません。
またその費用も新しく借り換えたローンに組み込むことができるため、現金として用意する必要もありません。
多くの実績からいろいろなパターンのケースを事例として持っている会社ですので、離婚時の特殊なトラブルなども親身に相談に乗ってくれる会社です。
離婚の際の借り換えは信頼できるプロに任すのが一番です。
この離婚・住宅ローン対策センターなら安心して相談ができます。
不動産の所有権の変更もしっかりと確認
住宅ローンの名義の他にもうひとつ変更しておかなくてはならないものがあります。
それは不動産の所有権です。
「住宅ローンが妻の名義になったら所有権も妻の名義になるのでは?」
これは間違いです。
住宅ローンの名義と不動産の所有権の名義は全くの別物です。
住宅ローンの名義の変更は金融機関との話し合いで行われますが、不動産の所有権の名義は法務局で所有権移転登記をします。
司法書士に依頼するだけでこの名義は変更できます(司法書士に頼まず自分で行うこともできます)。
そしてこれは住宅ローンを借りている銀行(金融機関)には連絡等は行きません。
ですので住宅ローンの契約は夫のまま、不動産所有権だけ妻に変更というのもシステム上はできます。
しかし、これはのちのち金融機関から住宅ローン契約違反に問われる可能性があります。
また住宅ローンが残っていてオーバーローンの状態の時はその住宅が勝手に売却されることはないかと思いますが、完済後金融機関の抵当権がなくなればもう売却は自由です。
その時の所有権が夫のままだったら・・・あり得ないとは思いますが、ここはしっかり離婚時に所有権を移転しておくべきです。
よくあるケースとして、住宅ローンも終わりしばらくたった後に住宅を売却しようと思っても実は名義が別れた夫のままになっていて、夫の現在の所在がなかなかわからず売却できなかったなどを言う話もあるのです。
その住宅をお子さんに将来確実に残すためにも自分の(妻の)名義に変更しておきましょう。
不動産の所有権移転には税金はかからないの?
「不動産の名義を夫から妻名義にした場合に税金はかからないの?」
という疑問も出るかもしれません。
夫の名義になっている不動産を妻名義に変える場合、離婚前でしたらそれは贈与になり贈与税がかかってきます。
ですが、配偶者控除というものが適応になるので評価価格2,000万円までは課税されません。
(この2,000万という金額はその不動産の現在の評価価格であり住宅ローンの残高のことではありません)
離婚後の場合は「財産分与」という扱いになるので贈与税他の税金はかかってきません。
税金面で心配がある場合は、離婚後に所有権の移転登記をした方が面倒はないでしょう。
安心できる未来のために2つの名義の変更は確実に
以上が「妻子がそのまま持ち家に住み、夫が住宅ローンを払う」場合の問題点でした。
離婚してすぐはいいかもしれません。
しかし、その後お互いにどういう状況になるかはわかりません。
愛着あるその家を手放さずに生涯にわたって安心して暮らしていくためには是非2つの名義変更
- 住宅ローンを変える
- 住宅の名義を変える
この2つを確実に行っていきましょう。
できれば離婚と同時進行がベストです。
時間がたてばたつほど話し合いや書類のやりとりも面倒になります。
離婚調停の際に、弁護士の方を依頼している方もいると思います。
弁護士は親権、養育費、財産分与、慰謝料など様々な問題の調整を行ってくれます。
持ち家(不動産)に関しても、その家にはどちらが住むのか、名義はどうするのか、残っているローンはどちらが払うのかなどの調整もしてくれます。
しかし、やってくれるのはここまでで、ローンの借り換えの手続きなどは専門外です。
依頼があればもしかすると金融機関に借り換えの話くらいはしてくれるかもしれませんが、これはまず通ることはないでしょう。
この離婚に関する住宅ローンの借り換えについては、専門の信頼できるコンサルタントを依頼し、確実にローンの借り換えができるようにお願いするのが一番でしょう。
手数料はかかりますが、自分で行う場合は、申し込みからすべて自分で行わなくてはいけません。
借り換えの受付に積極的な金融機関を探すとこからはじめる必要があります(近所の銀行にとりあえず行ってみるというわけにはいきません)。
そして運良く申し込みまではできたとしても、そこから審査で2〜3ヶ月かかります。
ここで審査が降りなければまた一からやり直しです。
離婚時は住宅の問題だけではなく他にも多くの問題を抱えている事だと思います。
自分で解決するしかないものもたくさんあるので任せられるものは任せて進むのがいいと思います。
次は夫がローンを払いそのまま住む場合についての問題点です。